イース世界の斜め読み解釈

そろそろ「イースフェルガナの誓い〜」が発売されるので、
モチベーションを上げておこうと、イースIIのOVAである
イース 天空の神殿〜アドル・クリスティンの冒険〜」を久しぶりに見た。
各30分全4話でうまくまとめられており、結構良作だと思っている。


当時見たときはただの勧善懲悪ヒロイックファンタジーだと思っていたのだが、
最近は永井豪思想に傾倒しているためか、少し違った見方をすることができた。


イースの基本的な物語はこうだ。
太古の時代、イースの二人の女神は人間に「魔」を扱う力をもたらす黒真珠を与えた。
以来、古代帝国アトランティスの如くイースの栄華が続いていく。
しかし、人間の限りない欲望は魔物(悪魔)を生み出し、逆に人間を破滅へと導いた。
魔物の力が外の世界に広がることを恐れたイースの六人の神官たちは、黒真珠と魔物を道連れに
イースの地を大地から切り離し、イースを天空へと隔絶させた。


永井豪論で言えば、神や悪魔の力は異次元に存在するエネルギーであり、そう考えれば、
イースの女神が与えた黒真珠は、異世界との「扉」であり、その力を使うための媒介である。


神の力の源である異次元との扉だとすれば、魔物もまた神の生み出した創造物である。
だが、神の望まぬ姿として進化した魔物を、神は忌み嫌い、無に返そうとする。
ここで神に望まれた創造物である人間と、望まれざる魔物との永き最終戦争が始まる。
魔物を次々と打ち倒していくアドル・クリスティンは、まるで黙示録の大天使ミカエルの如きだ。


ちなみに、二人の女神は人間の少女の姿で登場するが、あれは真の姿ではあるまい。
ルシファーが飛鳥了の姿をとっていたように、フィーナ・レアの姿もまた仮である。
イースIVで女神たちが有翼人であることが判明しているが、有翼人のその姿は天使に酷似する。


この作品の秀逸なところは、最後に魔物を救済して終わることだ。
イースの魔物の権化であるダーム(=黒真珠)は、魔の力で生き永らえている少女リリアに降臨しようとするが、
同じく魔の力で生き永らえる魔物キースの悲しみに触れ、「望まれざる悲しみ」を知ったリリアは、
「待ちましょう、望まれる世界に生まれ変わることを」と魔物を受け入れる。
そして、アドルが黒真珠を破壊すると、リリアと魔物は消滅する。
もっとも「救済」といっても、魔物の「精神」を救済しただけで、
結果だけ見れば、魔物は人間に滅ぼされてしまっただけ、とも取れるのだが・・・。


消滅してしまったリリアだが、結局、最後は脈絡なく生き返ってくる。
この辺は適当に脳内補完しておけということだろうが、人間であるアドルを愛してしまった二人の女神が、
アドルと愛を育むことができる、地上に存在できる「人間」としてリリアを再生させたのだろう。
傍目にはただ生き返っただけのように見えるが、あれはリリアであり、フィーナであり、レアである。
ちなみに、神が創造物である人間を愛してしまうというのは、「デビルマン」において、
天使ルシファー(飛鳥了)が人間である不動明を愛してしまったことへのオマージュだろうか。


二人の女神が昇華しなければならなかった理由はよくわからないが、
あれしきの魔物に封じ込められたりするくらいだから、それほど高位の天使ではないのだろう。
もしくは、黒真珠がないと人間界で力を使えないのかもしれない。
どちらにせよ、アドルの「人はまだ魔の力を持つべきではなかった!」という言葉通り、
二人の女神は浄化された黒真珠を持って天に帰っていくのである。


こうしてみると、今まで「よーし、パパ魔物やっつけて世界を救っちゃうぞー」と
稚拙に見ていたファンタジーRPGの世界にも奥行きが見えてくるような気がする。
特に「イース」の世界は、有翼人(=天使)の生み出した魔物をアドルが打ち倒していく、
つまり神の失敗をアドルが帳消しにしていっているようにも見えてくる。
これで最後のオチが、実はアドルは高位の有翼人(=大天使ミカエル)で、二人の女神は彼の従僕だった。
そして、魔物を率いる同じ高位の有翼人(=堕天使ルシファー)との最終戦争に挑む・・・だったら凄いな。
で、ミカエルの持つ剣こそ、クレリアの剣でした、みたいな。


こんなことを考える俺は、永井豪に毒されたのだろうか。

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・・・と、これ書いた直後に家にある「イース大全集」をパラ読みしたら、
年表とかあって興味深かった。無理矢理永井豪世界にこじつけられるだろうか・・・?